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◆◆◆◆横須賀基地
◆◆◆在日米軍
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◆日本・自衛隊FAQ目次
東亜FAQ目次


 【質問】
 横須賀なんかではどうして米軍基地側施設にも海自の艦が停泊してるの?
 自衛隊側が手狭だから借りてたりするの?
 それとも実態は米軍と一体だったりするの?

 【回答】
 日米地位協定2条4項A
「合衆国軍隊が施設及び区域を一時的に使用していないときは,日本国政府は,臨時にそのような施設及び区域をみずから使用し,又は日本国民に使用させることができる.
 ただし,この使用が,合衆国軍隊による当該施設及び区域の正規の使用の目的にとって有害でないことが ,合同委員会を通じて両政府間に合意された場合に限る」
に基づいて,米軍基地を自衛隊が一時的に使用していると思われる.

(鷂 ◆53cmjHPmWw)


 【質問】
 純軍事的に考えて,横須賀から他への空母母港の移転はあるだろうか?

 【回答】
 広江隆文の見解では,その可能性は低いという.

 現在,横須賀の代替となりえるのは,グアムのアプラか,ハワイのパールハーバーしかない.

 しかし,パールハーバーには,西太平洋艦隊2隻目の空母の母港として有力視されており,となると,アプラしかない.

 だがアプラを母港化しようとすると,アプラ港自体の補修施設,5000人近い上院とその華族向けの住宅施設,および病院・学校などの公共施設,CVW-5が厚木から移駐できる基地,そのクルー・家族向けの住宅施設などの完備を必要とする.
 彼によれば,現実的にはそれはかなり難しいのではないかとしている.

 詳しくは「航空ファン」 2006年4月号,p.62を参照されたし.

 また,江畑謙介の見解でも,それに否定的である.
 彼は次のように横須賀の利便性を説く.

 横須賀を母港とすることにより,米本土に母港を置く場合に比べて片道2週間,往復で1ヶ月の,太平洋横断に要する時間が節約できる.それによって空母が少なくとも1隻節約できる計算になり,打撃群を構成するほかの水上艦を加えるなら,相当数の艦,おおよそ横須賀配備水上艦の3〜5倍の数が,この前方配備によって節約できている計算になる.

 〔略〕

 横須賀艦船修理施設(COMFLEACT)は「米海軍にとって必要なあらゆるものを提供できる最大にして最良の」施設とされる.
 元は旧日本海軍の工廠であり,現在でもハワイ以西,西太平洋において最大の海軍造修所で,空母を含む米海軍のあらゆる艦船を入渠修理できる能力がある.
 〔略〕
単に大きいだけでなく,深さも大きく,完成して喫水が大きくなった船でも入渠させられる.
 これが造船専用ドライドックと異なるところで,未完成のまだ喫水が浅い状態で新造船を引き出してしまう像専用ドックや,修理の時には荷を降ろして喫水が浅い貨物船やタンカーの修理用ドックでは,12メートル近い喫水を持つ空母を収容できない.
 〔略〕
 さらにこの艦船修理施設は,原子炉関係を除く,殆どあらゆる整備・修理に対応できる設備を持つだけではなく,極めて高度な技量を有する日本人従業員によって支えられている.
 横須賀に米空母として最初に海外配備(母港化)となった(1972〜91年)ミッドウェーCV-41は1945年の完成で,当時,米海軍の空母としては最も古い艦であった.
 それを横須賀配備にしたというのは,冷戦当時の戦略環境の中で新型空母を極東に前線配備することへの躊躇いからだけではなく,この古い艦を横須賀なら問題なく動かし続けられるだろうという米海軍の見込みもあったはずである.
 事実,当時の太平洋艦隊司令官は米議会において,
「(老朽化している)ミッドウェーは,(横須賀艦船修理部の)日本人従業員による献身的な思いやりのある整備修理作業によって動いている」
と証言した.
 〔略〕
 また横須賀港を出たすぐ前の海面に造られた艦船消磁施設は,海上自衛隊と共用ではあるが,西太平洋において唯一の施設である.
 消磁施設は鋼鉄の艦船に溜まる磁気を除去するためのもので,磁気感応機雷や魚雷に対する防御には欠かせない施設であり,これがないと,一定期間ごとに消磁施設があるハワイや米本土に戻らねばならない.

「米軍再編」(ダイヤモンド社,2005/6/1),p.289-292

 仮にアプラに母港を移転させるとすると,これら設備をアプラに新造せねばならない.
 それには莫大な費用がかかる.
 日本がそのひようを全額出すというのであれば別だが,現実にはまず不可能な相談だろう.


 【珍説】
 空母が横須賀に居座る件ですが,米軍にとっての基本戦略という事はわかりました.
 しかし,日本が「はい,そうですか」と無条件に米軍の都合をのむ必要はないですよね?
 日本としては,アメリカがそんなに空母を置いておきたいと言うのであれば,それを条件にしてきちんと交渉すればいいんです.

 それとも,消印所沢さんは,そこまでして日本が米軍の「奴隷」のように無条件に要求をのむのをお望みなんですか?
(もしかしてアメリカのエージェントですか?)

あつこば(小林アツシ) in mixi
(軍事学的考察上の必要性に鑑み,
引用権の範囲内で引用しています)

 【事実】
>日本が「はい,そうですか」と無条件に米軍の都合をのむ必要はないですよね?

 決して無条件に飲んでいるわけではない.
 ナショナル・パワーの力関係により,要求を呑まざるを得ない場合もあるが,その場合も協議を重ねている.
 日本外交が弱腰かどうかの問題は,「岩国移転は米軍の都合」であるという証拠には,何らならない.

>日本としては,アメリカがそんなに空母を置いておきたいと言うのであれば,それを条件にしてきちんと交渉すればいいんです.

 上述のように,米空母を必要としているのは,日本も同じ.
 よって,交渉材料になどならない.
 交渉材料を言うのであれば,例えば安保ただ乗り論に反論すること(小川和久説)や,冷戦後の脅威低下を交渉材料にする(江畑謙介説)ことは出来るかもしれない.
 しかし少なくとも,米空母の撤収要求は現状,不可能に近い.

>消印所沢さんは,そこまでして日本が米軍の「奴隷」のように無条件に要求をのむのをお望みなんですか?

 誰もそんな話はしていない.
 是々非々でやることを望んでいるが,トンデモ珍説と思われる言説には賛同できない,というだけのこと.

>(もしかしてアメリカのエージェントですか?)

 陰謀論は月刊「ムー」にでも書きたまえ.

消印所沢 in mixi,改


 【珍説】
 アメリカの空母が横須賀を事実上の母港化する際に,空母が配備されるのは「おおむね三年」と言われていました.
 しかし,そのまま30年以上もたっています.

 いいかげんにアメリカに帰ってもらいましょう.

 それが無理だとしても,母港化当時には,空母艦載機の離着陸訓練は厚木基地では行わないという約束があります.
 ですから,約束と違います.
 まずは,艦載機の離着陸訓練をやめてもらいましょう.

あつこば(小林アツシ) in mixi
(軍事学的考察上の必要性に鑑み,
引用権の範囲内で引用しています)

 【事実】
 つまり日米安保条約実質廃棄かね? 空母の撤収は,日米安保の形骸化を意味するからね.
 艦載機の訓練をやめるのも,実質,空母の戦力を無にするものであり,やはり空母撤収と同義.

 実にバカ旗,じゃなかった赤旗っぽい意見だね(爆笑).その意見は論外.

消印所沢 in mixi,改


 【珍説】
■深化した日米同盟 小泉政権の5年半
>母港化に反対し,五十万人を超える署名を集めた「原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会」.共同代表の呉東正彦弁護士は「通常型空母の選択肢を選ばず,配備される限り永続的に続く危険の扉を開けてしまった」と批判する.
----

 【事実】
 もうアメリカには通常動力型空母は無くなってしまうのだから,その選択技は自然消滅したのです.
 消えた選択義を選べといわれても.
 無茶苦茶です.

JSF in mixi


 【質問】
 アメリカの空母について質問です.
 横須賀にG・ワシントンが配備されましたが,マスコミの中に「戦力の増強」と報道しているのがいます.
 通常動力の空母から原子力空母に変わると戦力は本当に上がるのですか?
 また,上がるとしたらどれくらい上がることになるんでしょうか?

 【回答】
 通常動力艦に比して原子力艦の有利な点は
・燃料補給の必要がないので,長時間,高速で航行できる.
・航空用燃料や弾薬を,多量に積める.
という点.

 具体的に比較すると,ジョージ・ワシントン(ニミッツ級)は
・キティホーク(キティホーク級)より少し大きい,けっこう新しい
・原子力化については長所短所あるが,基本的に性能面ではプラス

 武器弾薬の搭載量が6割増くらいになるんで,単純攻撃力で1.6倍.
 搭載機自体は通常空母と変わらんし,補給体制が万全なら弾薬庫が空になる前にきちんと補充されるから,この1.6倍という数字も容易にかき消される性質のものではある.

 また,艦載機1割強増える.
 一日当たりの出撃数,つまり単位時間当たりの攻撃力も通常空母よりは上.
 これはカタパルト用蒸気を母艦航行用ボイラーから転用する必要がないためで,具体的な数字は失念した(調べればわかることなので頑張ってみてね)が,確か1〜2割程度増くらいだったかと.

 さらに,キティホーク級の満載排水量とニミッツ級の基準排水量はほとんど同じ.
 ただしサイズ的に見ると,「少し大きい」程度にしかならない.
 つまりキティまでの空母は,レイアウト的にかなり無理してることになる.

 数字としてはっきり比較できるのはこれくらい.

 数字に表れない運用上の利点としては,原子力艦は燃料をそのつど補給する必要がない(ただし,補給する際には艦を半分バラさないと補充作業が出来ない)ので,それだけ行動の自由が増すし,即応性も増す.

 もっとも,
「もう原子力空母やめたいけど,通常動力空母建造のノウハウが薄く,かえって通常動力のほうが高く付く」
という説もあるそうな.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 もし仮に日本に原子力空母が配備されることになったとして,この場合,原子炉の整備はいちいち米国本土に帰ってやることになるのでしょうか?

消印所沢 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 【回答】
 車で言うところの車検のような,機器・部品の点検交換等は現有施設でも十分可能だと考えます.
 また,設備新設は必須となりますが,使用済核燃料を除く放射性廃棄物の処理(注:最終的な処分ではない)も不可能ではないと考えます.
 ただ,日本国内の法規制等との整合性がどうなるか微妙なところですが.

 核燃料の交換を伴う大規模改修工事は,大変やっかいな使用済核燃料の管理・貯蔵・米国内貯蔵施設への輸送が必須となります.
 そのため,他のものと比べハードルは格段に高く,いくら同盟国の日本とは言えども,そこまで行うとは考えにくいです.
 もし可能なら米国は歓迎するでしょうが,コストまで考えると,歓迎するのかどうかも不明です.

 軍事機密や日米地位協定等もからむため,状況を見通すことは困難ですが,現実的にはケースバイケースで対応するものと思われ,
 「横須賀だけで完結する」とは考えない方が妥当と愚考します.
 以上,ご参考まで.

へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 米海軍では,潜水艦もそうですけど,原子炉区画に出入りできる人員を厳しく制限しています.なにしろ,トム・クランシーですら入れてもらえないぐらい(マテ

 ですから,日本人従業員が多くを占めるはずの横須賀SRFが原子炉がらみの作業に手を付けるのは,保安規定の面からいって不可能なんじゃないでしょうか.

井上@Kojii.net in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

>原子炉区画に出入りできる人員

 厳しく制限するのは,まずもって当たり前の話と考えます.

 トム・クランシーの著作等から,米海軍で定める原子炉区画は民生用PWR原子力発電所における原子炉格納容器(内部には一次冷却系全てと蒸気発生器が存在)内と同等と推測されますが,当然それ以外の区画より格段に放射線レベルが高いことが容易に想像されます.
 その理由として,原子炉があることはもちろんですが,原子力界の常識として同じような配管,環境においても,低温部より高温部の方が付着,蓄積する放射能量は多いということがあるため,基本的に1次系が高温の加圧水で満水であるPWRではその影響は高くなります.

 そのため,民生用PWR原子力発電所では,放射線管理の観点からもその他に比べ,原子炉格納容器内部に立ち入ることは制限されます.
 ましてや軍事用となれば,原子炉区画は原子炉関連の中核であり,防振装置など秘匿事項・ノウハウ等は相当分あると考えるのが妥当ですから,たとえトム・クランシー級のVIPでも制限するでしょう.

 一方,メンテナンスの観点からすると,少し事情が異なります.
 原子炉本体はとりあえずメンテナンスフリー(制御棒貫通部など致命的に重要な例外もありますが)としても,一次冷却材ポンプは動的機器のためシール部などのメンテナンスは不可避(シール部を無くしたポンプも存在しますが,これもまた他の部分のメンテナンスが欠かせません)でしょうし,蒸気発生器の検査も欠かせません.
 ある程度,遠隔でかつ稼働中も監視するのは当然でしょうが,核燃料交換頻度よりも短い周期で,やはりある程度の間隔(長くても5年程度でしょうか)で点検が必要となるのは,民生用の経験から判断して避けられないと考えます.

 この程度の頻度で発生し,かつ所要マンパワーの多い点検・整備を米国本土のみで行うのか,横須賀でも行うのか.
 艦の数が多い原子力潜水艦では交代も効くため,米国本土のみでも十分に可能だったと考えますが,限られた原子力空母では米海軍もどうするのか,保安規定(機密保持)との両にらみで難しい判断を迫られるものと考えます.

 逆に民生用なら,日本国内にはその手の点検・整備のプロは数多くいますし,重工メーカーのプライムは無理としても,その下の枢要な(=致命的に重要な)基盤部品のサプライヤーも数多くの分野であります.
 そのため,原子力推進艦保有国以外の米国の同盟国の中では,日本の整備ポテンシャルは高く,機密保持さえできれば有望,とも判断されても不思議ではないのでしょうか.

 以上,長くなりましたが,ご参考まで.

へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」


 【珍説】
軍事研究 2009年6月号
http://gunken.jp/blog/archives/2009/05/09_0000.php
----
特別施設日本にあると議会証言
GWの原子炉部品修理,米海軍が認める
石川巖
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 【事実】
 まあ,予想通りというのか,読んでいて失笑してしまうような記事でした.
 大体にして,「放射性廃棄物が1トン」搬出された等の記載を持って,
「今回のメンテ/修理作業は(中略),(原子炉の)一次系と二次系の機器や部品のほとんど全てに及んだ」
とやるものですから,笑うしかありません.
 大体,「放射性廃棄物が1トン」といっても,単純に言えば放射性廃棄物の200Lドラム缶たった5つほどにしかなりません.
 そのようなごく少量の放射性廃棄物しか出さない「原子炉のほとんど全てに及ぶメンテ/修理作業」とは,一体何でしょうか?
 米海軍は化け物のような放射性廃棄物処理施設でも抱えているのでしょうか.

 元朝日新聞編集委員とあれば,日本国内の原発を目の敵にして追っかけている朝日新聞の記者を,大勢知っているはず.
 その人間に聞けば,原子炉の点検で一体どれくらいの放射性廃棄物(ドラム缶に限っても良いでしょう)が発生するのか,その桁を比べればどれほどの作業量であったのか容易に推測できるはず.
 放射性廃棄物の発生量自体,電力会社や青森県六ヶ所村の日本原燃で受入量も含めて,広く公開していますので,比較して調べるという発想がない方がおかしく,その能力もないとなれば石川巖氏の限界は明らかでしょう.

 また,「原子炉の部品」などと仰々しいことを言っていますが,一体それぞれがどの程度の重さか考えたことがあるのでしょうか.
 人間が人力でどうにかできる重さだと思っているのでしょうか.
 そうすれば外観だけでも,どこに(何に)着目すればいいのか,自ずと明らかなはず.
 Controlled Industrial Facility (CIF;原文のContorolledはtypo) や Radiological Work Facility にうんちくを傾けてみても,放射性物質(放射能)取り扱い施設に何が必要か,常日頃,朝日新聞等がさんざん新聞ネタにしておいて顕著な特徴があるはずなのに,石川巖氏はそれも指摘できない有様.

 まあ,石川巖氏に原子力の素養を求めるのが無理なのはよく分かりましたが,論説委員で活躍された期間が長すぎたのでしょうか,記者としての素養も身につけていないのも,よく分かりました.
 もっとも,これについて技術的に妥当と考えられる見方,及びチェックポイントをこれ以上示唆するのは,リムピースなどに塩を送るのも同然ですので,公開の場では控えます.
(必要があれば,信頼できる方限定でメール等での直接のやりとりでお話しします.
 機微情報に触れない程度なら,何故そのような視点に立つのか含め,今現在も現場に立つ経験他から,より子細にお話しできますので.)

 そのため,これ以上信頼できない人間のお話を信じたり,つぶしたりするより,それらの人間がつかんでいる情報を引き出す場にして,詳細にそのレベルを検討する方が軍事板的には有益と愚考します.

 以上,ご参考まで.

へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」



 【質問】
 軍研の元記事読んでないからなんとも言えないんだけど,タイトル通り実際修理が行われたことは明白じゃないか.
 そこを鬼の首をとったかのように「規模がわかってねー」って書かれても,?なんだが.

in FAQ BBS,2009年5月23日(土) 14時53分
青文字:加筆改修部分

 【回答】
 リンク元の質問のタイトルが
【珍説】 「米空母ジョージ・ワシントンの日本でのメンテナンスは,原子炉の一次系と二次系の機器・部品ほとんど全てに及んだ(石川巖)」???
なので,回答が
――――――
>大体にして,「放射性廃棄物が1トン」搬出された等の記載を持って,
「今回のメンテ/修理作業は(中略),(原子炉の)一次系と二次系の機器や部品のほとんど全てに及んだ」
とやるものですから,笑うしかありません.
 大体,「放射性廃棄物が1トン」といっても,単純に言えば放射性廃棄物の200Lドラム缶たった5つほどにしかなりません.
 そのようなごく少量の放射性廃棄物しか出さない「原子炉のほとんど全てに及ぶメンテ/修理作業」とは,一体何でしょうか?
 米海軍は化け物のような放射性廃棄物処理施設でも抱えているのでしょうか.
――――――
となるわけです.
 『特別施設』がどの程度特別なのかは重要な問題だと思いますね.

 ただ,質問本体にはそのことが書かれていませんので,誤解を招きやすいとは思います.

ぺこさん in FAQ BBS,2009年5月23日(土) 17時36分
青文字:加筆改修部分


 【質問】
----
Japan Military Review「軍事研究」: 軍事研究 2009年7月号
http://gunken.jp/blog/archives/2009/06/10_0000.php
総括:空母ジョージ・ワシントンの原子炉修理
米海軍は日本にあると証言し,外務省は知らないとする放射線管理作業施設CIF
石川巖
----
という記事の信頼性は?

 【回答】
 総括と言うことでとりまとめがなされていましたので,こちらも総括を.

 CIFの存在については承知しておりませんが,結局のところ「原子炉のメンテナンス」で何が一番重要なのか.何が人手を取られ,放射性廃棄物が多量に発生するのか,やはり石川巖氏には全く持って分かっていない,というのが正直な読後感です.
 いろいろ調べたこと,撮影・観察したことなど掲載されており,周囲を取り囲む作業船などの写真は興味深い点がありました.
 しかし,上記のポイントを理解していないことから,肝心なところを撮影・観察・記載していなかったり,総括の中での矛盾点や説明が付きにくい点などがそのままに放置されています.
 まあ,石川巖氏が理解していないため,それまでと言えばそれまでなのですが,(軍事・原子力)技術評論の立場からすると惜しすぎるというか,何とも言い難いところで.

 一番の問題点は以下に集約できるでしょう.

----
 こんど問題点として私として強く実感したのは(中略)“原子炉”の解釈が米海軍の考えと日本の一般社会常識とで違うのではないか…ということだ.
 日本の一般社会常識では“原子炉”とは炉心と,そこから熱を取りだして蒸気に変える放射能防護壁に囲まれた全体を考えているのに対し,米海軍は核燃料がある炉心部分だけをいっているようなのだ.

(軍事研究 2009年7月号 p.117より引用
----

 「日本の一般社会常識」と,原子力専門従事者である私自身の常識が異なるのかもしれませんが,日本国内でも「原子炉」といえば,「原子炉炉心」を取り囲む最低構成要素である,「原子炉容器(BWRでは原子炉圧力容器)」一式を指すのが普通です.

 ここで石川巖氏が言う
「炉心と,そこから熱を取りだして蒸気に変える放射能防護壁(正確には原子炉格納容器)に囲まれた全体」
というのは,普通「原子炉一次冷却系」と呼ばれる部分であり,原子炉と緊密な関係のある部分です.
 しかし,「原子炉一次冷却系」を構成する各々重要な機器である「原子炉容器,加圧器,一次冷却材ポンプ,蒸気発生器」をまとめて「原子炉『周り』」と呼ぶことがあっても,「原子炉」と呼ぶ人はまずいません.
(専門的には,「原子炉冷却材圧力バウンダリ」と呼ぶことが多いのですが,これは専門に過ぎますので,ここではこれ以上触れません.)

 まあ,「原子炉一次冷却系」から水や蒸気が漏れた場合,原子炉本体から漏れたのとほぼ同義になりますので,「マスコミ的な単純化」では「原子炉」と呼ぶのかもしれませんが,これではどこの部分に問題があるのか分かりませんので,かなり問題のある認識でしょう.

 また,「米海軍は核燃料がある炉心部分だけをいっている」とありますが,これも問題のある記述です.
 この場合,「原子炉炉心」とそれを取り囲む圧力容器である「原子炉容器」との区別が付いていないことが指摘できます.
 もちろん,ほぼ同義にして良い場合もありますが,RCOHなどを考える際,この区別が付いていないと,RCOHで何をやっているのか全く分からないことになります.

 以上のことは単純に言葉の定義の問題かもしれません.
 しかし,このことを持って,

----
 本当に米海軍はそういう定義をしているのか.
 相手を煙に巻くための外交的詭弁なのか.
 そのへんを知りたい.
 米国の一般社会常識ではどうなのだろうか.

(軍事研究 2009年7月号 p.117より)
----

と問題提起されている以上,
「それは石川巖氏他の完全な知識不足による誤認識です.
 勝手に自分の『一般社会常識』を広めても,それは大きな間違いであり,私のような専門従事者だけならともかく,日米両政府からも相手にされません」
と回答するしか無くなります.
 まあ,今まで「自分たちが正義」で,「自分たちが勝手に定義付けをして既成事実化する」手法が成立していた時点であれば,まだその問いは有効だったのでしょう.
 しかし,今の世の中であればその誤りを指摘されておしまいでしょう.

 ことほどかように興味深いテーマでありながら,肝心な部分での基礎知識に大きな齟齬,理解・調査不足があったために,ここまで酷評される総括となってしまったのは,立場を異にする物としても残念なところです.

 本総括のうち観察やインタビューなどの事実部分と,石川巖氏他の考察部分は分けて考えるべきであり,本総括はそれ自体,記録として有用と考えます.
 しかし,根本的な部分での致命的な理解・調査不足による,稚拙な考察部分がそれを台無しにしているのは困ったものであり,有用な資料を含みながら,どこが有用でどこがダメなのか,区別が付きにくいところが非常に惜しいと考える次第です.

 以上,ご参考まで.

へぼ担当 in mixi,2009年06月13日16:45
青文字:加筆改修部分


 【質問】
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軍事研究 2010年 06月号

犬棒記者の在日米軍見て歩き
軍港工場船へ接近禁止の横須賀桜祭り
横須賀基地では軍港工場船に近付けない.アチコチに設置されている放射線検知器
石川巖
----

 この記事の信頼性は?

 【回答】
> アチコチに設置されている放射線検知器

とあって,「SENSITIVE MONITORING DEVICE(高感度モニタリング装置)」について,想像たくましく記載されていましたので,カラーの写真を探してみました.するとありました.

「原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会」
http://cvn.jpn.org/
該当写真(拡大して検証に耐えられる物)はこちら
http://cvn.jpn.org/image/photo/100328monitor58_1.jpg
曰く「放射能モニタリング装置か,基地内のあちこちにあるのが,印象的でした.」とのこと.

 今更,放射線と放射能の違いについて繰り返しませんが,それでも石川巖氏より「原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会」の方が,まともな見方をしていると感じた次第.

 写真で見る限り,正解は我々専門従事者にとっては明々白々であり,従事経験1年生でも分かるような簡単なことですが,下手に知識を付けるのも何ですので,特別にご要望が無き限り,いったんは伏せておきたいと考えます.

 ただ,ヒントとして,それら「銀色の箱」の材質が何であるのか.プラスティックなのか,アルミなのか,単なる鉄(ブリキ等含む)なのか.
 それによって目的その他も全て分かるのですが,配線有無やハイテクに気を取られ,その箱の材質と放射線の特性から極めて容易に想像できることに思いが至らない点.
 そして,いろいろたくましい想像を巡らせながら,専門の記者や専門従事者に問い合わせれば一発で回答が返ってくる事項に対し,自分自身の取材経験に慢心し,それを怠る石川巖氏は相変わらず酷い,と評価せざるを得ないところです.

 ただ,私個人にとっては良い勉強のきっかけになりましたし,次回の横須賀内見学の際は確認する点が増えましたので,その点だけは評価したいと考えます.
 とは言っても,原子力空母の配置に伴い,他の民間原子力施設と同様にあまりにも当たり前に推測でき,当たり前に設置・管理されている物について,読者が当該知識に不慣れなことを良いことに(?)不確定情報も織り交ぜるのは,何か意図があるのでは?とも逆に疑いたくなってしまいます.
 もっとも,上記は私個人の思い過ごしでしかないでしょうが.

 皆さんは如何お考えでしょうか.

2010年05月16日 00:29,へぼ担当

以上,「軍事板常見問題 mixi別館」より
青文字:加筆改修部分


 【珍説】
「シバレイ」:掲載記事など/お礼
>米原子力空母ジョージワシントンの横須賀母港化
>事故が起きた場合,被害は最大で160万人が死亡

 【事実】
 リンク先も覗いてみましたが,この人も熱出力と軸出力(発電所なら電気出力)の区別が出来ない人のようですね.
 まあ,もとより期待はしていませんが,常に期待の斜め上を逝くところが何ともです.
 ちなみに雑誌の方は,あの手の定番で立ち読みの価値すらないのは明らかですので,念のため.

へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

ちなみにシバレイの元ネタは,これの模様


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