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◆◆◆国連および周辺国
<◆◆第2次レバノン紛争
<◆戦史
<中近東FAQ目次
【質問】
この紛争を巡る関係国の思惑は?
【回答】
イスラエルとしては国連なり友好国のコントロールするノーマンズランドをレバノン南部に作るのが目標だろうね.
自国の兵力であのエリアをコントロールするのは代償や負荷が大き過ぎる.
要は,ロケット弾が飛んでこなければ当面それでOKと.
結局,事の成り行きはイラン次第だと思う.
シリアは,泥沼化を望まないのはイスラエルと同じ.ヒズボラには程々に暴れて欲しいが,自国の兵が巻き添えになるのは勘弁という点でイランと立場が異なる.
【質問】
イスラエル軍がシリア空爆を行う可能性はあるか?
【回答】
ヒズボラが大幅に戦闘力を高めていることから,ヒズボラを支援するシリアに対し,強い警告を与えるための空爆が行われる可能性があるという.
一方,シリア当局者はイスラエルへの挑発を避けようとしているようだが,一般のシリア国民は,懸念と反感の間で気持ちが揺れ動いているという.
以下引用.
今回の戦闘激化で明らかになったのは,ヒズボラが戦闘能力を大幅に高めていることで,兵士拉致に対するイスラエルの報復が開始されると,数百発規模のロケット弾をイスラエル北部に撃ち込み,13日にはイスラエル第3の都市ハイファにロケット弾を着弾させた.
14日付のイスラエル有力紙は,イスラエル軍が近くヒズボラを支援するシリアへの空爆を開始するとの軍事専門家の分析を掲載.国際社会の反応やシリア軍との衝突に発展しかねない可能性を考慮すると現実には容易ではないが,イスラエルとしてはシリアに「強い警告」を与える必要にも迫られている.
レバノンでの戦闘が激しさを増す中で,紛争はまもなく,ヒズボラを支援し,ハマスを含むパレスチナ武装集団を滞在させているシリアに波及するといううわさが立っている.
現代世界問題研究所のダマスカス駐在員,アンドルー・テーブラー氏は「シリア・トゥデー」誌の客員編集者でもあるが,ヒズボラとハマスを支援しているシリアが懲罰を受けるのを見たい,というイスラエル人が多いと発言した.
同氏はアルジャジーラに対し,
「イスラエルや米国にいる人たちは,シリアが兵器や物資をヒズボラの手に渡るトンネルの役を果たしていると信じています.
こうしたことがあるので,イスラエルが発電所や幹線道路のようなシリアのインフラ拠点を攻撃することでシリアへの圧力を強める可能性があるのです」
と話した.
ヒズボラのイランとの密接な関係もまた,イスラエルのレバノン爆撃が中東地域の軍事紛争をさらに広げるのではないかという恐れを生じさせている.
イランは国際的に孤立しているものの,多くの人たちが,イランには自国が資金や武器を供給し,訓練している「イスラム聖戦」や親イランのシーア派武装集団などを通じて,混乱を生み出す潜在的な能力があると,考えている.
専門家たちは,シリアの影響力も過少評価すべきではないと警告している.
シリア軍は予算を欠き,装備も劣悪で,練度も低いが,シリア政権には,スンニ派のアラブ聖戦信奉者が在イラク米軍と戦うのを支援するなどして,中東における米国の野望をくじく力はあるのだ.
ダマスカス在住の政治分析家であるウムラン・ザービイ弁護士はアルジャジーラに対して,
「シリアはレバノンとは違う.弱小国家ではなく,域内に同盟国もあり,イスラエルと米国が今,直面しているよりもっと大きいジレンマに落ち込ませるむこともできる」
と語った.
同弁護士はさらに,
「イランは,米国のイラク経営を永久に失敗させてしまうようなパワーを持っている.
エネルギー供給を止め,石油価格を高騰させるという脅しをかけることができる.
イスラエルは最強の軍事力を持っているかもしれないが,力は軍事力だけではない」
と述べた.
シリア政府はイスラエルの攻撃に対して国を防衛することを公約した.
モーセン・ビラル情報相は16日,公式声明を発表して,
「シリアに対するいかなる侵略行為も断固として直接的な反撃を受けるであろうし,それは時間にも手段的にも制限されない」
と述べた.
バシャール・アル=アサド大統領は,この間,国家の「持てる限りの資源」をレバノンのために使用するだろうと言明した.
アラブ世界の支持を獲得するため,シリアはまた,自国をレバノン人とパレスチナ人の唯一の守護者として描き出そうとしている.
国営紙「ティシュリーン」はイスラエルの攻撃ばかりではなく,他のアラブ諸国の「恥ずべき沈黙」を声高に批判した.
16日付け同紙社説は,米国の後押しを受けたイスラエルが「中東地域の地図」を引き直そうとしていると述べた.
すでにシリア人労働者2人がイスラエルのレバノン爆撃で死亡した.ベイルート南郊でのイスラエルの空爆の犠牲になったものと,シリア国営通信SANAが15日に報じた.
イスラエル側はこれまで公式にはシリアに脅威を与えてはいない.しかし,アラブ側報道機関は,イスラエルが密かにアサド大統領に対し,最後通告を発したと報じた.
15日付けの汎アラブ紙「アル=ハヤト」は,米国の後押しを受けたイスラエルがシリアに対して,イスラエル兵捕虜2人を解放し,イスラエル北部に対する越境攻撃を中止するようヒズボラに圧力を加えるために,72時間の猶予を与えたと報じた.
米国政府当局者はこの報道について,否定も肯定もしていない.
これまでのところ,イランもシリアも今次紛争については静観の姿勢を保ち,さらなるエスカレーションを避けようとしている.
〔略〕
シリア当局者はイスラエルの攻撃を挑発することを注意深く避けようとしているようだが,隣国レバノンにおける戦闘を注視している一般のシリア国民は,懸念と反感の間で気持ちが揺れ動くのを感じている.
ダマスカスの南25キロにある典型的なシリアの町で巡礼地でもあるサイイダ・ザイナブでは,約150人が15日夜,抗議集会に集まり,黄色いヒズボラ党旗や旗を振り,支援を叫んだ.
同日,レバノン沖でヒズボラがイスラエル艦船1隻に大損害を与えたというテレビニュースが流れると,幾つかの自動車行列がダマスカスを走り回り,警笛を鳴らしたり,ドラムを叩いたりした.
しかし,事態をより深刻に見守る人も多い.シリアの赤半月社のアブドゥル・ラーマン・アッタル総裁はアルジャジーラに対し,
「国中が警戒心を高めています.最悪の事態に備えねばなりません」
と語った.
(翻訳・ベリタ通信=日比野 孟)
【質問】
イスラエルが敵だと,民族・宗派を超えてシリアとイランは呉越同舟するんじゃない?
なんせイランは,イスラエルを地図上から消したいと本気で思ってるからね.
イスラエルがシリアと開戦すれば,その絶好の機会だろう.
【回答】
シリアは過去イスラエルに散々痛い目に遭わされてるからそんなに単純じゃない.
配下のテロ組織にも決して手綱を緩めず,イスラエルの本格的な報復を招くような攻撃は,水面下で阻止してる.
基本的にレバノンで覇権を握ることには熱心だけど,イスラエルと事を構えるのは神経質なまでに避けるのが近年の傾向.
また,シリアは極少数派のアラウィー派による独裁だから,宗派問題には神経質.
それにイスラエルと正面からやったら勝ち目が無いことぐらい分かっている.
シリアとしても,イランに利用されるのは御免だろう.
【質問】
2005年,レバノン政府の後盾だったシリア軍がレバノンから撤退したことによって,
レバノン政府の支配力低下→今の状況
は必然だったんじゃないの?
【回答】
元々,レバノン戦争以前は南部をPLOが支配.事実上のファタハ・ランドとして反独立国化していた,
彼らは今のヒズボラ同様,カチューシャ・ロケットをイスラエル領内の自治体に降り注がせた.
そのため,遂にイスラエルが開戦を決意して侵攻,ベイルートまで進撃するが,同盟状態にあったキリスト教マロン派の民兵がパレスチナ難民を虐殺(シリア兵も別口でパレスチナ人を狩っていたが)し,当時の国防相シャロンが引責辞任,イスラエル軍が撤退に入る.
当初の目的であったPLO支配地,ファタハ・ランドの崩壊や,アラファトふくむ指導部のチェニス逃亡もあったし,あとは国境地域に緩衝地帯をもうけ,南部に自由レバノン政府,まあ南部の住民と同盟関係を結んだ政府を樹立させた.
ところが,ここにイランの肝煎りで南部のシーア派住民にバスタランがオルグし,ヒズボッラーが誕生,
モザイク国家レバノン南部に事実上のシーア派によるゲリラ組織ができたことで,イスラエルと戦闘に入る.
つまり,モザイク国家レバノンは北部,中部をシリアの影響下に入り,南部はPLOが去った後,他宗派の住民が出ていく形になり,イスラエルとの激戦の末に,ヒズボラがこの地の支配権を獲得し,イスラエルの撤退を獲得した.
これが7年前の話で,それ以来ずっと南部は半独立国の状態,
シリアつーより,ヒズボラに影響力あるのは設立当初からかかわってきたイランの方.
ま,そのイランの言う事も,事実上の半独立国家を手中にしてからは,聞かん傾向が結構あったような.
レバノンの北部や中央に住む他宗派の住民にすりゃ,もともとモザイク国家だし,とんだ迷惑じゃね.
【質問】
民間人を殺傷する悪のテロリスト国家イスラエルに対し,国連は制裁を課すべきでは?
【回答】
まぁ,良い悪いで語ってたらだめだよな.軍板としては.
というか非合法な民兵武装組織をコントロールすらできず,世界で一番凶暴な国の兵士をさらって,軍事介入の口実を与えたレバノンがアホだということですな.
二人さらわれた時点で,レバノン政府がヒズボラ民兵に対して強硬な姿勢だけでもみせたら,少しは時間稼ぎできたかもしれんが,ヒズボラがレバノン国会の議席を多数持っている以上難しかったんだろうなぁ.
どっかで馬鹿が「北朝鮮が制裁されたのになぜイスラエルはウホポポポポポポ.」っていってたけど,国連がヒズボラの武装私兵集団には武装解除を求めているのに,それに反発し,お隣の国の兵士さらってるんだから,国連としてもヒズボラの味方はできんよなぁ.
で,「何故平和にならないのか?」も直接的にはシリア&イランのせい.
レバノンでは反シリア政治家の現レバノン政権(シリアの傀儡と言われる)によると思われる暗殺が相次いだ.
故・ハリリ元首相なんてその筆頭だな.
お陰で内政自体が混乱してて,それがレバノン政府の力を大幅に弱めてる.
それに乗ずる形で「唯一成功したイランによるイスラム革命輸出」たるヒズボラが南部での影響力を強め,殆ど独立地域みたいに振舞っていると.
解決策は「全レバノンをきちんと統治できる強大なレバノン政府」しかなく,それを阻止してるのは当たり前だがイスラエルじゃない.シリア&イランだ
.
【珍説】
自分ところの領海に撃ち込まれたわけでもなく,誰一人死んでもないミサイル発射には,「制裁を!」と騒ぎ立てるわけなのだが,一方で国連人権理事会でのイスラエル批難決議には反対した日本.だんだん米国なみにトンデモ国家になってきたなぁ.
【事実】
まず,ミサイル発射は米朝ベルリン合意や日朝ピョンヤン宣言違反.
約束違反に対して何のペナルティも課すな,などと言うほうがトンデモ.
また,テポドン2が世界中の独裁国家に拡散すれば,国際社会にとって重大な脅威となることは明白.
そのような脅威に対して何のペナルティも課すな,などと言うほうがトンデモ.
さらに,上述のように,今回の紛争は,どちらかだけが悪いとは言えない状況.はっきり言ってどっちもどっち.
にも関わらず,何の国益上のメリットもないのにイスラエルだけを非難するようなアンフェアをしろ,などと言うほうがトンデモ.
何度も現地(レバノン)へ行っていても,何も見えない人もいる,ということの生き証人みたいな人だね.
【質問】
レバノンに国連軍いなかったっけ? 今,どうしてるの?
【回答】
UNIFILとしてカナダ・オーストリア・フィンランド・中国軍等2000人が派遣されていたが,身動きとれず,食糧不足に陥っているという.
創設以来UNIFILは,南レバノンが,最初はパレスティナ・ゲリラ,次には侵攻したイスラエル軍,更にはイスラエル軍再撤退後のヒズボラの民兵によって席巻されるのを,ヒズボラ支持者の多い南レバノンの一般住民に対して人道的支援を行い始めてからは,ヒズボラ寄りのスタンスで拱手傍観してきた.
イスラエルは,UNIFILの任務遂行能力を厳しく批判し,また,過去の拉致事件にUNIFILが関与していたのではないかと疑っている.
以下引用.
【中国】レバノン危機:PKO中国軍,身動きとれず食糧不足
レバノン南部にPKO(国連平和維持活動)で派遣されている中国軍がイスラエルの攻撃により身動きが取れなくなっている.
19日付の新華社によると,食糧不足が深刻化しており,最長でもあと10日ほどで備蓄が尽きてしまうという.
レバノンに派遣されている中国軍は主に工兵から構成されており,4月から任務を開始した.地雷除去,道路や建造物の修復などの人道支援に当たっている.
中国軍の宿営地はイスラエルと対立するヒズボラの拠点のすぐ近くだという.
イスラエルの攻撃により,中国軍の工兵部隊184人を含む約190人が宿営地の防空壕に退避している.
これまでのところ死者及びけが人はいないもよう.
しかし食糧不足が深刻化している.中国軍は食事の回数を1日2食に制限し,食事の量に上限を設けるなどの対策をとっているが,最長で10日程度で食糧は底をついてしまう見込みだ.
また重装備をした炊飯部隊が十分に警戒しながら地上で食事の準備をしているという.
〔略〕
(編集担当:菅原大輔)
>重装備をした炊飯部隊が
炒飯部隊と読んでしまった……
UNIFILはイスラエル・レバノン間の国境地帯に78年から駐留しており,隊員数は約2000人(05年10月末現在).イスラエルは,UNIFILの任務遂行能力を厳しく批判している.
12日以降,レバノン南部の港湾都市ティールで,UNIFILの関係者とその妻の2人がイスラエル軍とヒズボラの戦闘に巻き込まれて死亡したほか,UNIFILのガーナ兵4人が負傷している.
UNIFILは,1978年に,イスラエル軍の南レバノンからの撤退を監視し,南レバノンの治安を回復し,レバノン政府の支配を南レバノンに及ぼす目的で暫定的につくられたものです.
しかし,その後も南レバノンを舞台にした紛争が続き,他方UNIFILは兵力不足と権限の欠如により本来の任務を果たせないまま,南レバノン住民に対する人道的支援にあたり,現在に至っています.
兵力は次第に減らされて現在2,000名です.
創設以来UNIFILは,南レバノンが,最初はパレスティナ・ゲリラ,次には侵攻したイスラエル軍,更にはイスラエル軍再撤退後のヒズボラの民兵によって席巻されるのを,ヒズボラ支持者の多い南レバノンの一般住民に対して人道的支援を行い始めてからは,ヒズボラ寄りのスタンスで拱手傍観してきました.
(以上,基本的にニューヨーク・タイムズ(7月19日アクセス)による.)
1996年4月18日,南レバノン侵攻中のイスラエル軍が国境から約10kmレバノン領に入ったところに位置する町であるカナ(Qana)のヒズボラの迫撃砲及びロケット陣地を攻撃していたところ,この町のUNIFILの敷地がイスラエル軍によって「誤射」され,この敷地内に逃げ込んでいた一般住民100人以上が死亡し,約100名が負傷しました.
その結果,レバノンでの反ヒズボラ勢力もイスラエル軍非難の合唱に加わり,米国が仲介に入ったため,不本意ながらイスラエルは8日後に停戦を受け入れざるを得なくなります.
しかも,当時オランダの少将が率いる国連調査団は,この砲撃は単なる事故とは言えない,と結論づけました.
執拗にこの敷地をねらったイスラエル軍砲撃パターンや,この間,上空にいた2機のヘリコプターと1機の無人機の存在(イスラエルは否定)がその理由です.
(以上,ニューヨーク・タイムズ,及びBBC(どちらも7月31日アクセス)による.)
しかし,当時,既にヒズボラは一般住民やUNIFIL等を楯に使ってきていたことから,イスラエルの人々のUNIFILに対する怒りは一層大きくなって行きました(注9).
その怒りに油を注いだのは,バラク政権の時なのですが,バラクの選挙公約に従って2000年5月にイスラエル軍が南レバノンから撤退した直後の2000年10月に起こった拉致事件です.
この時,ヒズボラによってイスラエル兵3名が拉致されたのですが,この拉致にUNIFILが手を貸したとイスラエルでは受け止められたのです.
(以上,ウィキペディア英語版,前掲による.)
この拉致事件の解決は長引き,結局シャロン政権の時の2004年に,この3名のイスラエル兵の遺骸(及び1名のイスラエルの民間人)とパレスティナ人等の収容者433名とを交換する形で決着を見ます(注10)
(ガーディアン(7月19日アクセス),
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060803/mng_____kakushin000.shtml
(8月3日アクセス),及び
台北タイムズ
(8月4日アクセス)).
〔略〕
このように,イスラエルから見れば,有害無益以外の何物でもなかったUNIFILは,ついに今年8月1日をもって廃止されることになっていたところ,今次紛争勃発により,一ヶ月廃止が先延ばしになってしまいました.
これで,UNIFIL創設以降の28年間に,UNIFIL要員の死者は260名に達した勘定になります
(ニューヨーク・タイムズ.8月3日アクセス).
これだけイスラエルにとって有害無益だったUNIFILですから,ヒズボラが,イスラエルとの和平に当たって,南レバノンに新たな国連ないしNATOの平和維持部隊の派遣を嫌い,単なるUNIFILの兵力増大を求めている(The war in Lebanon――Strategic consequences, Strategic Comments-Volume 12, Issue 6July 2006)のは当然のことなのです.
〔略〕
【質問】
国連軍を攻撃することによるイスラエルのメリット,狙いはなんなのでしょうか?
【回答】
あれはマジな誤爆.
「だって,何度もUNIFIL攻撃されてるじゃん! それなのに誤爆??」
と言うかも知れんけど,それはなんでかっていうと,UNIFILのおとなりにヒズボラの拠点があるから.
下のサイトに,国連の旗とヒズボラの旗が仲良く並んではためいている写真〔下画像〕があるから見てみ.
http://michellemalkin.com/archives/005611.htm
国防軍の誤射で死亡した国連部隊の兵士が
「ヒズボラが我々を盾に利 用している」
という苦情メールを上官に送っていたことも判明してるし(イディオット・アハロノット,2006年7月28日)
んなわけで,ヒズボラの拠点をしつこく爆撃すると,必然的に国連への誤爆も増えることになる.
国際世論を気にして,地上軍の全面投入を躊躇っているイスラエルが,わざと国連軍攻撃して国際世論を刺激するわけないっしょ.
過去にはカナのUNIFIL誤爆事件で,不本意ながらイスラエルが停戦を受け入れざるを得なったこともあるし.※
イスラエルがアメリカに精密誘導爆弾をクレクレ言ってたのもそういう理由から.
faq47f02.jpg
(こちらより引用)
※1996年4月18日,南レバノン侵攻中のイスラエル軍が国境から約10kmレバノン領に入ったところに位置する町であるカナ(Qana)のヒズボラの迫撃砲及びロケット陣地を攻撃していたところ,この町のUNIFILの敷地がイスラエル軍によって「誤射」され,この敷地内に逃げ込んでいた一般住民100人以上が死亡し,約100名が負傷しました.
その結果,レバノンでの反ヒズボラ勢力もイスラエル軍非難の合唱に加わり,米国が仲介に入ったため,不本意ながらイスラエルは8日後に停戦を受け入れざるを得なくなります.
しかも,当時オランダの少将が率いる国連調査団は,この砲撃は単なる事故とは言えない,と結論づけました.
執拗にこの敷地をねらったイスラエル軍砲撃パターンや,この間,上空にいた2機のヘリコプターと1機の無人機の存在(イスラエルは否定)がその理由です.
(以上,ニューヨーク・タイムズ,及びBBC(どちらも7月31日アクセス)による.)
しかし,当時,既にヒズボラは一般住民やUNIFIL等を楯に使ってきていたことから,イスラエルの人々のUNIFILに対する怒りは一層大きくなって行きました.
まあ,国連軍が役立たずというのは,昔からデフォだけど.
例えば,
ソマリアPKO→攻撃されて米軍と一緒に逃げ出した
ルワンダPKO→虐殺が行われるのを眺めてただけ.とある国連職員曰く,「ルワンダ人の命は,ベルギー人や日本人やアメリカ人の命に見合うだけの価値が無い」.
その後の報道では,地図の誤りで誤爆した,という説明がされている.
以下引用.
<レバノン情勢>国連軍施設空爆はイスラエル軍地図の誤り
【エルサレム樋口直樹】レバノン南部でイスラエル軍とイスラム原理主義組織ヒズボラの戦闘が行われていた7月25日,国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の施設がイスラエル軍機に空爆され,要員4人が死亡した事件は,イスラエル軍が使用していた地図の記載内容の誤りが原因だったことが14日,明らかになった.
ロイター通信がイスラエル外務省報道官の話として伝えた.
これによると,現場一帯の軍部隊の位置などを記した地図上で「国連軍施設が本来あるべきところに記載されていなかった」.
事件当時,国連軍施設の近くでヒズボラの「敵対行為」があり,同施設をヒズボラの陣地と勘違いしたという.
〔略〕
ま,アンチ・イスラエルな人は,何言っても信じないだろうけど.
【質問】
紛争収拾のための国際社会の動きを遅らせている要因は?
【回答】
「即時停戦」(アナン国連事務総長)
と
「ヒズボラの武装解除も含めた持続可能な停戦」(USA)
とが対立軸となっているからです.
ソースはおきらく軍事研究会,平成18年(2006年)7月31日.
また,レバノン南部への国際部隊の展開についても,レバノン国内に反対意見がある他,国際部隊への参加を表明していたフランスでも,自国軍がヒズボラの攻撃を受ける可能性が高いとの見方が強まり,反対論が出ている(イェルサレム・ポスト)とか.
どこの国も自分が犠牲になりたくはない.
アラブ諸国でさえ米国からの駐留オファーを拒否した.(ムバラク大統領いわく,「エジプト軍を巻き込むなんてとんでもない」)
一番積極的なフランスでさえ,イスラエルとヒズボラから合意を取り付けない限り嫌だといっている.
もう20年以上前に,アメリカ軍とフランス軍のキャンプがヒズボラ系の自爆テロに遭って,それぞれ数百人の犠牲を出して「国際部隊」が撤退している.
「ヒズボラも同意しないと部隊派遣しない」とフランスが言ってるのは,そういうことがあったからだ.
で,部隊派遣の目処が立たないと停戦はないと米イスラエルは言ってる.
双方の同意の下で国際部隊が駐留したところで,誰かが攻撃してまたおかしくなるのが中東だけどな・・・
【質問】
国際停戦監視部隊はどのくらいの規模になりそうか?
【回答】
国際停戦監視部隊については規模も派遣時期も何も決まっておいませんが,
「少なくとも1万人は必要」(IISS ファンディーン研究員)
との見方も出ています.
部隊編成は,イスラム国を主軸にする必要がありますが,世界最大のイスラム国・インドネシアが早い段階で参加申し出をしていることは注目されます.
いずれにせよ,これは「停戦が実現してから」出てくる部隊の話です.
停戦をいかに実現させるか?についての具体策はまったく出ていません.
その後,部隊派遣を表明した主要な国と規模は以下のとおりです.
イタリア 3000人
フランス 2000人
スペイン 1100人
トルコ 1000人
インドネシア 900〜1000人
マレーシア 900〜1000人
ポーランド 500人
ベルギー 3〜400人
フィンランド 250人
バングラデシュ 1800人
ネパール 250人
明らかに国連軍兵士に支払われる外貨を目的としている国も含まれているようですが…….
なお,ドイツは議論の末,結局,地上部隊派遣は断念して海軍を主体として派遣することになりましたとさ.
以下引用.
独,レバノンに2400人 連邦議会派遣承認 外交史上大きな転換
【ベルリン=黒沢潤】ドイツ連邦議会(下院)は20日,国連レバノン暫定軍(UNIFIL)への独連邦軍の参加を正式に承認した.
ナチスによるユダヤ人大虐殺の歴史を持つドイツはこれまで,中東地域への平和部隊派遣に慎重な姿勢を見せてきたが,独外交史上,大きな方針転換となった.
派遣人員は2400人で,イタリアに次ぐ規模となる.
派遣期間は2007年8月まで.
レバノン沿岸にフリゲート艦2隻,高速艇4隻,ヘリコプター2機を派遣し,イスラム教シーア派組織ヒズボラへの武器供与を監視する.
10月上旬までに1500人規模の部隊を派遣し,オランダやスウェーデン,ノルウェー,デンマークなどと共同で任務にあたる.
独政府は当初,陸上への派兵も検討したが,歴史的な経緯から,イスラエル軍と対峙(たいじ)する可能性のある地上軍派遣は断念した.
これに代わり,数名の国境警察を配備するほか,税関職員をベイルート国際空港に配置する.
UNIFILへの参加について独国内では慎重論も根強い.
ナチスによる「過去」の問題もさることながら,戦闘が激化するアフガニスタンやコンゴ,ボスニアなどに約8000人の兵士を派遣し,負担が膨らんでいるためだ.
最近の世論調査では,UNIFIL参加に国民の32%が賛成,64%が反対している.
▼ その後,2009年4月12日,ポーランドが,レバノンの国連部隊から500人の部隊を年内に引き揚げるとした.
アフ【ガ】ーニスタン対策のためNATO軍に兵力を回すため.
レバノンの国連部隊が減るためイスラエルは懸念している.(P)▲
【質問】
停戦監視任務に就くフランス軍の装備は?
【回答】
その陣容は,想像以上に重装甲車両で固められています.
フランス軍のUNIFIL派遣規模は2000人程度なのに,部隊の装甲化率は非常に高く,もしそのまま大規模戦闘に巻き込まれてもある程度持ち応えることが可能です.
UNIFIL参加の仏軍,ハイテク戦車を投入 - レバノン [9/15 AFP]
国連レバノン暫定軍(UNIFIL)に派遣する部隊を構築する中で,フランスは少なくともルクレール戦車を90台と,装甲車約10台を投入した.※
一方,投入された車両の中で非常に気になる存在が.
UNIFILへの仏軍増援部隊が到着 - レバノン [9/13 AFP]
写真はベイルート(Beirut)の港で,貨物輸送船「Fast Arrow」から陸揚げされる仏軍戦車の「ルクレール(Leclerc)」
違う,これはルクレール戦車じゃありません.AFP通信の解説にはそう書いてあるけど,あからさまに違う.
これは戦車ではなく自走榴弾砲です.フランス軍のGCT155mm自走榴弾砲.※3
フランス軍は一体なんてものをレバノンに持ち込んでいるんですか.
この戦闘車両を持ち込むということは,戦車を持ち込むこと以上の大きな,重い意味があります.
自走榴弾砲と戦車の違い.それは自走榴弾砲が間接射撃を行う目的の戦闘車両であり,戦車は直接射撃を行う戦闘車両である事.その違いです.
戦車は直接目標を視認して射撃を行いますが,自走榴弾砲は目標が直接見えていなくても,敵の位置が偵察情報などで把握できていれば,曲斜弾道で長距離砲撃を行う事が出来ます.
戦車の主砲の有効射程は数km程度ですが,自走榴弾砲の射程は数十kmに及びます.
フランス軍はGCT自走榴弾砲を持ち込む事で,ヒズボラからロケット弾攻撃を受けた場合に,対砲迫レーダーで発射位置を特定し,GCTの間接砲撃で反撃を行う気なのでしょう.敵を直接目で見て確認せずに反撃を行うという事です.
つまり,付近に民間人が居た場合攻撃に巻き込まれる可能性が,戦車による攻撃よりも大幅に高くなります.
そもそも間接砲撃は直接砲撃よりも命中精度が低く,数を撃って面で制圧する方式なのです.
これが国連平和維持任務の装備として,「自衛の範囲を逸脱していない」?・・・これが逸脱していないのか,それが世界の常識なのでしょうか.
・・・それならば自衛隊も迫撃弾対策として,イラクのサマワに対砲迫レーダーと自走榴弾砲を持って行っても良かったのではないか.※2
自走榴弾砲では相手の迫撃弾に対し射程が長過ぎるというなら,大型対戦車ミサイルや迫撃砲でもいい.とにかく"国連平和維持活動"ですらこのような火力装備が認められるなら,構わない筈だ・・・
そういった論議が為されるべきでしょう.
フランス軍がレバノンに投入した戦力は非常に強力なものです.
本格的な戦闘にも対処する事を想定しており,ヒズボラ相手のみならず,IDF(イスラエル国防軍)の再侵攻があったとしても,無視できない存在と成り得ます.
平和維持活動を行うという事の意味を,改めて考えさせられました.
<以下,コメント欄より>
※
どうもルクレール90台というのはAFP通信の誤報で,一個中隊13両が真相らしい.
各種装甲車両を全部合わせて100両だと.
名無しT72神信者
※2
あれ? 自衛隊ってサマワに対砲レーダーもって行かなかったっけ?
……と思って調べたら,
http://nishio.main.jp/blog/archives/2005/02/post_99.html
番匠さん曰く,検討したけど持って行かなかったみたいですね.
(kkk)
※3
この自走榴弾砲はGCTシリーズのAUF-1.(AMX-30の車体を使用)
海外報道記事を漁って見ると,フランス軍の司令はGCT・AUF-1自走榴弾砲の事を「我がUNIFIL部隊の切り札」と呼んでいます.
他に対砲レーダーや小型地対空ミサイル(ヒズボラのイラン製UAV対策)なども持って行っている模様.
しかし自走榴弾砲がPKO任務部隊の切り札とは・・・
名無しT72神信者
ルクレール戦車投入はボスニア以来.
AUF-1はボスニア緊急即応軍に仏第40砲兵連隊が投入されてるらしい.
俺が持ってる国連PKFの特集本(洋書)にAMX10RCなんかと一緒に作戦中の写真が載ってる.
このときは英105mm砲,蘭仏120mm迫撃砲部隊とともに間接射撃戦力として活動したとの事.
ちなみに,フランス軍には,コートジボワールで民間人に向けて発砲した過去が.
名無しT72神信者
状況に詳しくないので間違ってる部分もあるかと思いますが,以下思ったことを.
ヒズボラに対しては強力な報復能力を備えてることを見せて抑止効果を狙い,装備が過剰でないかという指摘に対しては,イスラエル軍の再侵攻への抑止でもあるとして非難をかわす.
ヒズボラもイスラエルも混乱状況が長引いて現場レベルで挑発しあう等して再び戦闘状態などになれば,自分たちにとって都合が悪くなりそうなので,兵力引き離し自体には不服はないだろうと思います.
そこで両者のメンツを保ちつつ,その思惑をとらえ,フランス軍の存在感で両勢力の兵力引き離しを実現できれば,フランスの影響力も増すので(゚Д゚)ウマーてことなのでは.
こういう時に一番まずいのは,兵力引き離しが任務の平和維持部隊が力不足を見透かされ舐められて,その役割を果たせず,結局戦闘再開となることだと思いますので(確かセルビアあたりで軽装備・少数部隊のオランダ軍が舐められて任務を全う出来なかったケースがありましたよね),
戦闘をしたくないなら重装備を投入したり大兵力を展開するというのは有効なのだと思います.
ふじこp
【質問】
国連安保理の停戦決議案は,原案とはどう異なっているのか?
【回答】
国連軍の新設ではなく,UNUFILの拡大に変更.
「国連憲章第7章に基づく武力行使」という言葉がなくなった(武力行使自体は認められた).
といった点.
イスラエル側にとって有利な点は,そのまま残ったという.
以下引用.
原案と採択された決議との違いは,レバノンに派遣される15,000人の国連軍が新たに創設されるはずであったところ,現在2,000人のUNUFILの15,000人への拡大に落ち着いたことと,
この国連軍はレバノンにおける平和維持という任務達成のために,国連憲章第7章に基づく武力行使ができることとされていたところ,第7章への言及はなくなったけれど,(国連憲章第6章に基づく)平和維持活動の域(部隊の自衛)を超えて武力行使ができることとされたことですが,これらは実質的にはさしたる違いではありません.
また,Sheba'a Farmsへの言及も,イスラエルに収容されているレバノン人達への言及もない一方で,ヒズボラが拉致したイスラエル兵士への言及はなされていること,
また,ヒズボラは全ての武力攻撃を中止しなければならないのに,イスラエルは「攻撃的軍事作戦(offensive military operations)」を中止すればよいだけ(注5),というイスラエル側にとって有利な点はそのまま維持されています.
(注5)イスラエルは,今次レバノンにおけるイスラエルの軍事行動は,すべて防衛的軍事作戦であったと主張している.
イスラエルのオルメルト(Olmert)首相は,ブッシュ大統領に電話をかけて,米国の安保理での努力に謝意を表しました.
(以上,http://www.guardian.co.uk/syria/story/0,,1838894,00.html
(8月7日アクセス),及び
http://www.guardian.co.uk/israel/Story/0,,1839399,00.html,
http://www.guardian.co.uk/israel/Story/0,,1843191,00.html,
http://www.guardian.co.uk/israel/Story/0,,1843127,00.html
(いずれも8月12日アクセス)による.なお,採択された安保理決議そのものは,
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/08/11/AR2006081100774_pf.html(8月12日アクセス))
【質問】
停戦決議のどこに「ヒズボラの武装解除」が含まれているの?
【回答】
★UN cease-fire resolutionon conflict in
Lebanon
http://www.haaretz.com/hasen/spages/749631.html
条文に“安保理決議1559の完全な実施”って入ってるでしょ.
つまり,全ての民兵は武装解除せにゃなりませぬ.
というか,これがなければイスラエルが停戦飲むわけないです.
ちなみに決議案の内容
・当事者間の敵対行為即時停止要求
・レバノン政府軍及びUNIFILの南部展開,イスラエル軍の全面撤退要求
・イスラエルとレバノン双方に恒久的停戦支持を要求
・UNIFILを一万五千まで拡大
・UNIFILは戦闘停止を監視
・レバノンへの武器流入阻止を加盟国に義務付け
・UNIFILの任期を2007/8まで延長
【質問】
ヒズボラの武装解除は誰がやるの? フランス?
【回答】
武装解除実施にUNIFILは関与しない.
その部分の言及は,フランスとイスラム諸国会議の要求で決議から削られた.UNIFIL追加部隊の主軸を担うフランスは,戦闘発生が必至な武装解除任務を拒否ったらしい.
要求としては存在しますが,実際に武装解除を監視・執行する国際組織は存在しない.
となると,誰が武装解除をやるのか?
http://www.sakigake.jp/servlet/SKNEWS.NewsPack.npnews?newsid=2006081201000305&genre=detail
↑のに書いてある通り,停戦決議は「イスラエルの自衛的作戦による反撃」を認めてるので,ヒズボラがロケット弾を撃ってる限りIDFに正当性がつく.(※これすら蹴ると米国からも見放されかねない)
他の条文も含めると,レバノン政府が停戦したけりゃ,レバノン自らヒズボラ封じ込めに軍を出すしかない,というカラクリ.
ところが,レバノン政府にはヒズボラの閣僚もいるので,武装解除の先行きは不透明.ヒズボラが武器を隠匿して,武装解除されたふりをするんじゃないか,ってな懸念もある.っつーか,間違いなく隠匿するだろ,連中のこれまでの行動パターン考えると.
したがって,停戦の先行きはまだまだ不透明.
【質問】
ヒズボラは国連の停戦決議をどう解釈しているのか?
【回答】
ヒズボラ副書記長カッセム(Sheikh Naim Qassem)がTVインタビュー(2006年8月15日アル・マナルTVで放映)に答えたところによれば,
「UNIFILはレバノン軍に奉仕するためにあり,国連決議にある『敵対行動を防止する強制手段の行使』は,イスラエル軍に向けたものだ」
と解釈しているという.
以下引用.
記者
〔略〕国連暫定駐留軍(UNIFIL)についてはどうです.国際部隊ですが,ヒズボラは何か条件をつけるのですか.例えば,この国の派兵は駄目であるとか,こういう任務はいけないとか.
カッセム
国連決議によるとUNIFILはレバノン軍に奉仕するのが任務だ.換言すれば,レバノン軍が必要とする場合,軍が支援を要請するということだ.国連軍が独自に任務を遂行することはあり得ない.
記者
それはあなたの解釈ですか.それとも決議にそう書いてあるのですか.
カッセム
決議にそう書いてある.
記者
第12条によると,UNIFILは,その行動域が敵対活動のために利用されないよう,必要とするあらゆる行動をとる権限を与えられ,敵対行動を防止する強制手段の行使,が許されています.
カッセム
我々は敵対行動をとらないのだから,それは,イスラエルがやる敵対行動のことに言及したものである.
これが単なる方便なのか,本気でそう信じているのか,どちらなのかは不明.
【質問】
第2次レバノン紛争後,ヒズボラは実際に武装解除されているのか?
【回答】
イスラエル・メディアによれば,解除どころか,逆に強化されているという.
2008年4月23日(水)には,ヒズボラが武器を運搬中に国連軍に発見され,銃撃で抵抗して逃走.
ヒズボラの国連決議違反が明らかになった(P,Y)という.
2008/6/4には,イスラエルのバラク国防相は,ヒズボラが停戦決議に違反してレバノン南部の防備を固めていると,国境地帯視察後に警告した.
約150箇所の要塞が建設されている模様(H)だという.
▼ 2010年6月30日付Al-Akhar, Al-Nahar (レバノン)によれば,南レバノンの複数の町村住民が道路を封鎖し,訓練中のUNIFIL隊員達に投石する事件も起こっている.
なかにはつかみかかって殴りあいになるケースもあったという.
住民達は,この訓練がヒズボラ攻撃の予行演習である,と主張している.
また,レバノンの治安筋によると,レバノン軍は
「訓練が,イスラエルのレバノン攻撃を想定したものではなく,ミサイル発射の阻止を目的とした内容であるから」
という理由で,UNIFILとの協力を拒否している.
(http://www.memri.jp/bin/articles.cgi?ID=BLOG1310)▲
2010年7月2日付Al-Siyassa (クウェート)によれば,ヒズボラに近い筋は,南レバノン住民とUNIFILとの間に生じた最近の衝突は,1回限りのものではなく,UNIFILが同じ間違いを犯して,ヒズボラに対する攻撃演習を繰返せば,衝突が続く,と明言したという.
更にこのヒズボラ筋は,イスラエルのためにスパイをしているとして,UNIFILを非難した.
http://memri.jp/bin/articles.cgi?ID=BLOG1010
2010年7月8日(木)には,レバノン南部のヒズボラ拠点の情報をIDFが公開.
拠点は160の村に広がり,1日800発のロケット砲発射能力があるもよう.
また,ヒズボラは2万人の兵士と4万発のロケット砲を保持している.(Y,P)
2010年8月15日(日)には,トルコがイランと協力し,レバノンのヒズボラに武器を供給していると,イタリア紙が報道.
トルコ外務省は事実を否定した.(Y,H,P)
2010年8月31日(火)には,ヒズボラとシリア軍が,将来のイスラエルとの戦争に備えて,合同の司令部を設置していると,クウェート紙が報道.
陸海空軍を含む包括指令体制を作り,両軍が一体となりイスラエルを攻撃する計画も.(H)
2010年9月6日(月),先週金曜にヒズボラの軍事拠点となっていた建物で爆発事故があり,少なくとも5人が負傷.
IDFは,現場から残った武器を,人々が運び出す映像を公開した.
武器はモスクなどに運ばれたもよう.(H,Y)
【質問】
米軍によるレバノン在住米市民救出作戦の概要を教えてください.
【回答】
国防総省と国務省による複合人道作戦.
キプロスまでの運搬が軍の任務で,そこから先は国務省が担当する.
作戦部隊指揮官は,59任務部隊(キプロス)指揮官のカール・ジャンセン海兵准将.
18日,危険地帯にいた米市民250〜300名を軍ヘリでキプロスに空輸
19日,ギリシャの船「オリエント・クイーン」で960名の米市民を運搬
同日,海軍のドック型輸送揚陸艦「ナッシュビル」がキプロスに到着し,20日から救出作戦に加わる.これで2000名/日の救出が可能となった.(米国防総省)
19日,駆逐艦「ゴンザレス」「バリー」がレバノン近海で展開を開始.
19日,強襲揚陸艦「イオー・ジマ」(LHD-7)ドック型強襲揚陸艦「ホイットビー・アイランド」(LSD-41),ドック型強襲揚陸艦「トレントン」(LPD-14),高速輸送艦「スウィフト」(HSV-2),の4艦も,この作戦のため付与されているが,まだ展開していない.今後必要があれば展開させる.(米軍幹部)
19日,救出にあたる海兵隊部隊は「イオー・ジマ」の遠征打撃群[戦隊].
20日,海軍のドック型輸送揚陸艦「ナッシュビル」が救出作戦に加わる.(レバノンーキプロス)
20日,16日からはじまっている米市民の救出数は総計1600名に達した.
20日,救出にあたってはサウジ・イタリア・ギリシャの客船もチャーターしている.
20日,22日より「イオー・ジマ」が作戦に参加する.
20日,作戦に参加する最後の海軍艦艇は23日に到着する予定.
問題点としては,当初,避難希望者の数が日々急増したため,運搬すべき対象人数を正確に把握できなかった事が挙げられる.
また,kojii.netでも,
「困ったときの米軍頼み@レバノン情勢」
という,いささか皮肉混じりのタイトルの下,より詳細に記述されている.
著作権の発生しない「事実の伝達に過ぎない情報および時事の報道」(著作権法第10条第2項)の範囲内において,以下に転載する.
米国防総省はレバノンからのアメリカ人救出に備えて,ギリシアの客船 Orient Quee をチャーターした.同船は Beirut とキプロスの間を行き来することになっている.護衛は米海軍のイージス駆逐艦が担当する.(AFISNews, 2006/7/17)
この件に参加している艦艇は,USS Gonzalez (DDG-66),USS Barry (DDG-52),USS Iwo Jima (LHD-7),USS Nashville (LPD-13),USS Whidbey Island (LSD-41),USS Trenton (LPD-14),High Speed Vessel Swift (HSV-2).
地上戦闘部隊としては海兵隊の 24MEU がある.(AFISNews, 2006/7/18-19).
レバノンにいるアメリカ人は総数 5,000 名,アメリカとレバノンの二重国籍者を含めると 25,000 名に達すると見積もられている.
当初に 24MEU 所属の CH-53E×2 機で 42 名を空輸したが,後に 3 機に増強している.(AFISNews, 2006/7/17-18)
RAF Mildenhall の 352nd SOG からは,MH-53J Pave Low×2 機を投入した.(DefenseNews, 2006/7/18) (訳注 : AFISNews によると,イギリスから送り込まれた H-53 ヘリは 3 機)
さらに,救出用の船舶 4 隻を増強するための協議をまとめつつあるところ.欧州軍 (USEUCOM) と中央軍 (USCENTCOM) の麾下にある海軍部隊を派出して,この件を担当する任務部隊を編成することになった.(AFISNews, 2006/7/18)
816th EAS (Expeditionary Airlift Squadron) の C-17A がキプロスの RAF Akrotiri に到着,レバノンからの民間人救出に加わった.同隊は CENTCOM への 120 日ローテーションに加わっている.(AFNews, 2006/7/20)
その続報.
レバノン関連のまとめ
米軍部隊がこれまでにレバノンから救出したアメリカ人は 4,000 名を超えた.他国の国民も合わせると合計 60,000 名の避難民が発生すると見込まれており,キプロスで収容しきれない分についてはトルコが Mersin での受け入れを表明した.
避難船には Rahmah が加わったほか,イタリアの高速フェリー・Vittoria M も加わる.(AFISNews, 2006/7/21)
米軍がレバノンから救出したアメリカ市民の数は,10,000 人を越えた.国務省では,レバノンにいるアメリカ市民の数を 25,000 人ほどと見積もっている.(AFISNews, 2006/7/24)
前日の輸送実績は 2,166 人,累計輸送実績は 11,913 人.
こうしたレバノンからのアメリカ市民脱出と平行して,レバノンの一般市民に対する人道支援も実施中.
具体的には,NGO 経由で医療物資 (10,000 人の 3 ヶ月分) や毛布などを提供している.(AFISNews, 2006/7/24)
Condoleezza Rice 国務長官の Beirut 訪問時には,キプロスから現地まで 352nd SOG (RAF Mildenhall, UK) 所属の MH-53M Pave Row を使用,さらに海兵隊の CH-53E が警備に従事した.(AFNews, 2006/7/25)
累計 14,000 人あまりを輸送して,レバノンからのアメリカ市民救出活動が終了した.
大使館では,国外脱出を希望する人はおおむね運び出すことができた,とみている.(AFISNews, 2006/7/26)
【質問】
米国はレバノン和平に関し,どのような構想を持っているのか?
【回答】
レバノン正規軍を訓練強化し,彼らをもってヒズボラの封じ込めを図ることを考えているという.
以下引用.
米,レバノン軍の訓練計画=ヒズボラ封じ込め狙う
【ワシントン3日時事】マコーマック米国務省報道官は3日の記者会見で,米政府がレバノン軍の訓練や同軍への装備供与を計画していることを明らかにした.ライス国務,ラムズフェルド国防両長官が既にこの計画を承認したという.
マコーマック報道官は「条件が整い次第,実施する用意がある」としており,イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの戦闘沈静化が条件とみられる.
米政府は,レバノン危機の「根本原因」は対イスラエル攻撃を仕掛けたヒズボラにあるとし,ヒズボラの武装解除を前提とした「持続可能な和平」を目指すとしている.
レバノン軍の訓練計画には軍の強化を通じ,同国南部を事実上支配するヒズボラの封じ込めや武装解除を進めていく狙いがある.
米政府はレバノン南部への派遣が検討されている国際部隊には加わらない方針をすでに表明しているが,兵站(へいたん)などの支援は行うとしている.
今回のレバノン軍への訓練もそうした後方支援策の一環といえそうだ.
【珍説】
停戦監視とか兵力引き離しの国連軍といっても,装甲車も持たず,偵察ヘリなどの配備がなければ,単に国連の無力さを示す象徴にしかならない.
私が南部レバノンで目撃したのは確かアルジェリアから派遣された国連レバノン暫定軍だった.
当時,レバノン南部でイスラエル軍は,我が物顔で部隊や兵力の移動を自由に行っていた.
私がイスラエル軍に同行して取材していると,たまたまアルジェリア兵が乗ったピックアップ・トラックの国連パトロールと遭遇した.
するとピックアップの荷台に乗り自動小銃を持った8人ほどの国連軍兵士は,顔を下に向け,私たちと目が合うのを避けたのである.
その様子は”だらしない”というよりも,可哀想なぐらい惨めだった.
イスラエル兵はアルジェリアの兵士(あるいは政府関係者)が,国連から支給される派遣費(ドル)を得るために来ているぐらいにしか考えていなかった.
そのような厳しい現実を誰もが知っている.
しかしイスラエルはレバノン軍がヒズボラの武装解除できないことを承知で停戦決議を受け入れた.
〔略〕
これはイスラエルとレバノンという紛争当時国が,和平のために国連平和維持軍の受け入れを認めたことになる.
これは日本政府が定めた国連平和維持活動の派遣条件に該当する.
間もなく誕生する安倍新政権が,自衛隊のレバノン南部派遣を検討することは必至である.
隣接せるゴラン高原にはすでに陸自が派遣されている.日本のメディア各社は対応をおこたりなく.
【事実】
>アルジェリア兵が乗ったピックアップ・トラックの国連パトロール
UNFILにアルジェリア軍は参加していません.過去にも現在にも.・・・政治的にアルジェリアが出せるわけないじゃないですか.
というか,それ以前にアルジェリアはPKOしてもらう側では?
>間もなく誕生する安倍新政権が,自衛隊のレバノン南部派遣を検討することは必至である.
逆神の誤神託が降った! 「自衛隊のUNFIL参加は無い」 以上だ!
・・・逆神のお告げを聞くまでもなく,あんな所に首を突っ込むメリット無いっちゅーねん.
必ず死人が出る,損害を覚悟した上で行かなきゃならん土地だというのに.
JSF in mixi支隊
【珍説】
イスラエルは,アメリカがバックについているものだから,やりたい放題だな.
思いっきり他国を侵略して占領して民間人殺しまくっても「自衛権」とはおめでてーな.
軍事板
米国の擁護の元,イスラエル軍はやりたい放題だ.
イスラエルを暴走させているのは,「ユダヤ迫害の歴史」というよりも,むしろ米国の政策の問題が大きい.
【事実】
第一次中東戦争のときにはアラブ諸国は三方同時進撃なんてやらかして,当時のイスラエルの人口がいきなり半減してるが,その時アメリカなんて助けてくれなかったぞ.
その危機を克服して,その後の中東戦争のときには逆に,エジプトやシリアの首都100キロ手前まで進撃していたのに,アメリカにストップかけられてる.
超大国がバックにいるからってんなら,当時のエジプト,シリアもソ連が後ろ楯だったし,なに言ってんのやら.
今回だって先に攻撃仕掛けられたのイスラエルなんだが.
新聞ぐらい読もうよ.
そもそも,最初にイスラエル兵を襲い拉致したのはどこの誰かな?
国際法上,相手が攻撃してくる事が分かっているのに,相手が自国の領土に入ってからでないと攻撃できないとか,敵が攻撃後に自国へ引上げたら,もう反撃できないとか,朝日新聞なんかを読んでいると,そのように誤解する人が多いが,全く違います.
相手が攻撃してくる場合,その拠点を攻撃する事は,正当な防衛行為だし,敵が自国に逃げても追跡権があり,それも防衛行為の一つです.
ヒヅボラは,IDFが撮ったビデオにもあるとおり,住宅街やオフィス街からロケット弾を打っていますから,その拠点を叩くことは防衛上仕方ありません.
これを取り締まる事ができないレバノン政府は,自国の統治能力がないと見なさざるを得ません.
イスラエルは,そんな国を相手にしないと思いますよ.
【質問】
いったい,小泉首相は中東訪問で何を話してきたんですかね?
【回答】
お土産に持ってきた「平和の回廊」構想は悪くないと思うよ.
タイミングは最悪だったけど.
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