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イラクで撃破されたM1「エイブラムス」戦車
【質問】
イラクにおけるアメリカ軍の死傷率は高いのか?
【回答】
米軍史上,最も低いという.
Who's For Sale July 3, 2007:
ストラテジーページ:イラクにおけるアメリカ軍人の死傷率
という記事によれば,軍事専門家以外は誰も注目していないのだがイラク戦争はアメリカ軍の歴史の中で兵士の死傷比率の最も低い戦争なのだという.
ベトナム戦争の半分以下でWW2の3分の1以下.
軍備や訓練や,軍隊指揮手法の洗練によって兵士の死傷者は減っているのだが,その一方でテロリストによる兵士の被害があり,それは従来余り見られなかったものである.
現在では,テロリストの爆弾攻撃を壊滅させる為に爆弾工場や製造グループを一掃することが,民間人と兵士の被害を食止める為に最も必要とされる.
アメリカ軍が頭を痛めている事は,アルカイダなどのテロリスト集団に加えてイランの支援するテロリスト勢力がイラクに侵入してテロ活動を行なってることで,それはレバノンのヒズボラに属するシーア派テロリスト,パレスチナ人,その他を含んでいる.
アメリカ軍はイラク軍と警察,特殊部隊などの教育訓練にあたっていて,早い速度でイラクが自己の治安維持能力を確保できるよう努力している.
イラク軍の練度は向上しているのだが,アメリカ軍のこの方面での最大の悩みは上層部の汚職である.
イラク社会や軍に一般に広く行なわれてきた,
それらの悪弊を絶つことは容易ではない;
+
【質問】
イラクで米兵の死者が出ている事について,「米軍が苦戦している」と捉える意見を見ますが,当初から圧倒的優位なキルレシオであり米軍は優位だと論破されています.
なら米政府も「兵士は○人死亡したが敵を○○○人殺害した.我軍の大勝利だ」と戦果を強調しないのでしょうか?
【回答】
ベトナム戦争の戦果発表でそれをやった結果,
「でも味方は○人死んだことには違いない」
「敵を○○○人も殺害したのか」,
報道によってネガティブイメージばかりを先行させてしまい,最終的には軍事行動に対する自縄自縛を生み出したから.
ベトナム戦争に大尉として従軍,何もかも報道させた姿勢が不利な状況を招いたことを体験したシュワルツコフが,のちの湾岸戦争では徹底した報道管制を敷いているように,戦果発表を細大もらさず行うより,どちらかというと密室状態で戦闘が行われたほうが,戦闘に従事する軍には有利に働く.
また,民兵や武装勢力は殺害数ではなくそれを生み出す土壌をどの程度改善できたか,つまりイラク人がイラク政府あるいは米国の政策を受け入れていく土壌を生み出し,イラク人にどうやって返していくかという視点から測るべきだからでもある.
頑強な細胞を殲滅することはやむをえないにせよ,殺害により敵にとって有利な言説,土壌をはぐくむことに繋がるのであれば全く意味は無いどころか逆効果.
「今,武装勢力は何万名いてこれまでに何千名を殺害,拘束したから残りあと何千名をやっつければ戦争は終わる」
という性格のものではない.
ただし,米軍報道発表では殺害数や拘束者数はそれなりに発表する.
これは米軍が,対内乱作戦において情報を確実に入手し,勝つべき戦闘で勝っていることを伝える意味合いがある.
軍事板
【珍説】
イラクで息子を亡くし,大統領の牧場の近くで抗議活動をしているシンディ・シーハンという女性がいることからも,イラク戦争は間違っているのは明らかだ.
【事実】
シーハンは,息子が亡くなった事について大統領と既に面会をしているし,そのときにはイラク戦争を支持している.
その後,180度方向転換をしたのだが,これについては彼女の妹からも,
「彼女は,自分個人の政治的目的と知名度のために,自分の息子の名誉と名声を犠牲にしているように見える.
彼女以外のシーハン一家は,祈りと敬意をもって我々の国,我々の軍隊,そして我々の大統領を支持します」
とコメントされている.
詳しくは反MSM(2005/9/27)を参照されたし.
【珍説】
イラク駐留米軍では,ストレスでおかしくなる者,脱走者が相次いでいる.
【事実】
事実が誇張され過ぎている.
ストレスに苦しむ者も確かにいるが,これは戦場につきものであり,対策班も設けられているという.
以下引用.
「米軍は,専門家からなる戦闘ストレス対策班をイラク各地に派遣し,カウンセリングを行っている.兵士たちのストレスをすぐに和らげ,戦場での恐怖に対処する方法を教えることで,戦争に必ず伴う精神的な後遺症を軽減させることが目的だ.
戦場でストレスに苦しむ兵士は,セラピーやアドバイスだけでなく,薬を与えられることもある.ストレス対策班の精神科医ロバート・ラクシン大尉によると,診察を受ける兵士のおよそ4人に1人が抗鬱剤の処方を受けているという.
なかには,戦地では治療しきれないケースもある.これまでに538人のイラク駐留米兵が,心理的問題の治療のために本国などへ送られている(もともと精神疾患をもっていた者も多いと,軍は説明している).
それでも,米軍の戦闘ストレス対策は,兵士を戦地での任務にとどまらせることに役立っているようだ.第528戦闘ストレス分遣隊は,毎日2〜20人の兵士にカウンセリングを行っている.第113医療中隊では常時,平均で4人が「3食睡眠つき」の治療を受け,20人ほどが「外来」治療を受けている.
戦場でのケアの基本は,「3食睡眠つき」と呼ばれるシンプルな療法だ.「フィットネスセンター」と呼ばれる施設では,きちんとしたベッドと温かい食事が提供され,24時間いつでもカウンセリングを受けられる.3日間,寝たいだけ寝てくつろいでいいと言われて過ごすと,大半の兵士は任務に復帰できるようになる.
こうした米軍の戦闘ストレス対策班は,イラク国内にあと5,6チーム設けられている.
「普通」の戦争の場合,陸軍の兵員のうち前線の戦闘任務に携わるのは1割だけ.それ以外は,危険から遠く離れた場所で補給任務などに従事する.しかしイラクでは,駐留米兵の全員が戦闘任務に就いているに等しい状況だ.
専門家によると,前線の任務に就く兵士の約25%が戦闘ストレスに苦しめられるのが普通だという.そのすべてが本格的なPTSDにいたるわけではないが,湾岸戦争時には5〜10%がPTSDに苦しんだとされる.今回は駐留がさらに長期化し,ほぼすべての兵士が危険と隣り合わせであることを考えると,この割合はずっと高くなるおそれがある」
(ロッド・ノードランド & T・トレント・ギーガクス
from ニューズウィーク日本版 2004年1月14日号 P.28)
脱走者が相次げば当然,大問題になるはず(ヴェトナム戦争の同種の問題を参照せよ)だが,今のところ,怪しいソース以外の情報はない.
【質問】
アメリカってイラクとやって国力消耗したといえるのかな?
明らかな格下相手だったよな.
【回答】
イラク戦争により陸戦部隊がイラクで釘付けになってることによる抑止力の低下と,中国の台頭による相対的な軍事力の低下があいまっている.
前者は空軍,海軍の予算から人員(イラク地上勤務への転用に人員削減),それから開発予算が戦費予算に圧迫されることによる問題なんかも引き起こしている.
さらに空軍,海軍ともに新規の正面装備調達は抑制気味で装備の老齢化が進行している.
海兵隊の中型輸送ヘリや,空軍の戦闘機に爆撃機などが好例.
そこにイラクで酷使した各種地上装備が加わり,さらにハマーからMRAPへの更新なども控えている.
だからアメリカだってあれだけの戦力を持ちながら,うじゃうじゃいる気に入らない国家に片っ端から戦争しかけたりしてないだろ?
世界最強国家でさえ,戦争は最後の最後の手段.
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